「まだまだ現役」

新潟は、朝晩の風はかなり冷たくなり、桑原家の居間にはヒーターも登場しました。

そんな中、今日は、久しぶりに親方が工場にやってきました。
昨日から、親方のために仕事を作っていましたので、その仕事の事を伝えたら、早速「明日、工場に行く」とのことで、8時過ぎのバスに乗ってやってきました。


柾を柾割機に通す親方

82歳の親方は、まだまだ現役ですが、仕事を作ったと行ってもそこはやはり、軽い作業で、今日の仕事は、胴丸の胴巻きの面取りと、柾を柾割機に通す作業の2点。


面取りカンナで、胴巻の面を取る作業

それでも、休み休みやっていましたから、やはり疲れるんでしょう。でも、工場に来ると何だか、イキイキしているような気がするのは、気のせいでしょうか。


柾目を選別しています。

やはり人間は、仕事があるってのは大事なんですね。

明日は病院だからと、仕事は全て終わらせずに、「また来週来るから」と、お昼前に帰って行きました。

いつも展示会中に「たんす売れたか」と連絡をくれ、心配してるんだぁと感じていますが、昭和の激動の時代を、桐たんす作り一筋でやってきた親方には、今のこの時代はどのように写っているのでしょうか。

今では、全てが私に任されていますが、出来る時だけでも、工場に来て一緒に働けたらと思っています。

桐たんすの木取り  「板を組む」 先板

今回は、「板を組む」

板を組むとは、簡単に言えば、「木目をきれいに合わせていく作業」ではないか、と私は思います。

様々な部分の板があるので、その都度説明したいのですが、今回の先板であれば、引き出しの先に使う板ですので、出来るだけ
木目(柾目)を中心に違和感のないように、柾目の板を順番に並べていきます。

この時、同時に板の木表と木裏を確かめながら、互い違いにならないように並べて、そして、その並びでハタガネを使って貼れるように、印をつけて置いておく事を、「板を組む」と呼んでいます。

これが本体の側板であれば、真ん中に「大きな板目」を持ってきて、両側に柾目を並べて、出来るだけ一本の木に見えるように並べたりします。また、柾目で板を組むのであれば、柾目の細かい方から荒い方へ流れるように柾目を並べていきます。

昔から板を組む時は、組む板の前にあぐらをかいて、一枚一枚板に墨を付けて(印をつけて)作業をしています。
私もこの作業を、修行先から桐の蔵に帰って来てから、川崎さんという職人さんから教わり、その教えをずっと守って今も行っています。


組んだ板は、この順番でハタガネで貼るように印を付けます。

板を組む枚数が多いと、半日ほどこの作業をずっとやっていますが、どうしたら木目
(柾目)をきれいに見せられるかを考えながら板を組んでいくので、かなりセンスが問われる作業です。

今回は「先板」でしたが、様々な部分の板があるので、その都度、「板を組む」パターンも紹介したいと思います。

東京・代官山で展示会です。

 早朝、まだ雨の降る新潟を出発し、東京に着きました。

本日より24日(月祝)まで、東京・代官山ヒルサイドテラスを会場に桐の蔵の展示会を開催いたします。
東京は雨も上がり、日が差してきました。

お時間をお作りいただき、お出かけいただければ幸いです。
何卒、宜しくお願い致します。

桐たんすの木取り  「先板を切る」

今回は「先板」(さきいた)

「先板」とは、引き出しの先(奥)の方の板の事を言います。
地域によっては「向板」(むこういた)と言う呼び方だったりしますが、どちらにせよ引き出しの先(奥)の方の板のことです。


今日はその「先板」を切る作業でした。

注文が入った桐たんすの幅に合わせて先板を切ります。今回の先板は7分(約21mm厚)
まずは、倉庫に積んである7分板の中から、先板に適した木目の板を探し(これが大切、何でもいい訳ではありません)てきます。

その後は、注文を頂いた桐たんすの引き出しの長さに、7分板を切っていきます。その時は、柾目を中心に切ったり、板目が入ったりと、桐たんすのランクに応じて切り分けていきます。

また、切っていく板は今から1年以上前に製材し、その後、約1年間、外で雨に当て、雪に当て、日に当てながら桐板の渋を抜き、その後、天然乾燥させて倉庫に取り入れた板ですので、反ったり、歪んだりしている板なのです。


反っている板を半分に割って、狂いを取りやすくします。

それをそのままでは使えないので、反っている板などは、半分に割って(切って)片面を平らにならせるようにするのです。
「先板」はその都度切っていると間に合わなくなるので、私は、いつも少し多めに切ります。


反っている板のしゃくんでいる片面を、手押しカンナでならして、反りを取ります。

その後は、手押しカンナで板の反りや歪みを取るため、板の片面をならします。(目で見て、シャクんでいる方をならします)
これである程度、板の反りや歪みが取れます。


反っている片面をならした後、自動(自動カンナ)にかけ、平にして狂いを取ります。

板の反りや歪みが取れたら、自動(自動カンナ)に通して、軽く、板の厚みを決めます。
その後は、手押しカンナであいばを擦って次に進みます。

桐たんすの木取り  「柾の目直し」

先日のブログ「柾を切る」では、桐たんすの扉や引き出しの前板には「柾目」を使っていくことや、その柾目は木の木目で言えば「トロ」のような貴重で高価な部分である事などをお伝えしました。


柾割機に通して、一定の幅に切り込みを入れます。

その後、木の木目である「柾目」でも、木目は一直線ではなく少し曲げっているので、「柾割機」という機械に通して、柾を一定の幅に切り込みを入れます。


切込みを入れた柾を一本一本離して、接着剤を塗っていきます。

そして一定の幅に切り込みを入れた柾板を、切込みから一本一本離して、接着剤を塗り、ハタガネで徐々に締めながら、柾目を真っ直ぐに伸ばしていくのです。


ハタガネで締めながら、曲がっている柾目を真っ直ぐにしていきます。

この作業は、奥様が担当するのですが、私も和歌山の修行時代、この作業を朝から晩までずっとやっていました。


目直しをする前の柾(右)と、した後の柾(左)ピン!と真っ直ぐになります。

この作業(工程)をすることにより、曲がっていた柾目が、ピン!と真っ直ぐに伸びて、扉や引き出しに使える、真っ直ぐな「柾目」になるのです。

この作業は、一回で約10cmほどの柾目しか伸ばせなくて、それを繰り返し繰り返し、行っていくという、本当に手間も時間もかかる作業なのです。

なので、和たんす1本分(観音開きと引き出し)の柾目を作るのは、柾を切る事から始めると、柾の目直しまでで、私は2日ほどかかってしまう作業です。

桐たんす作りは、その殆どが手作業での作業ですが、本体を組み立てる以外の部分、木取りと呼ぶ、簡単に言えばパーツを作る作業でさえ、手作業に頼ることがほとんどなのです。

細かな柾目を作り出す作業は、こんなにも時間と手間のかかる作業なんですね。

桐たんすの表面(扉や引き出し)は、スッキリとした真っ直ぐな柾目。
この真っ直ぐな柾目が、桐たんすの命なんです。

「また来てねー」

昨日、新潟市のパン屋さんに就職した長女みほさんが、久しぶりに我が家に帰ってきました。

お盆のお墓参りの時に一瞬だけ帰ってきましたが、それ以降は連絡もなし。突然、奥様に「今夜帰る」との連絡があり久しぶりに顔を見ました。

長男のように長野県ではないので、比較的、帰ってくる頻度は高いのですが、それでも久しぶりだなーという感じでした。


みほさん手作りのパンプキンパイ。

仕事を終え、帰宅したら何だかいい匂いが立ち込めていましたので、見てみると、テーブルには「パイ」が。聞けばパンプキンパイとのこと、美味そうでした。

その後は次男も帰宅し、久しぶりにみんなでワイワイとなりましたが、いつもは私と奥様、そして次男の3人の時が多いのですが、昨日は他愛もない話に花が咲きました。

今週末は、長野県から長男も帰宅する予定。
私は、展示会でいませんが、やはり家族が揃うっていいですね。

桐たんすのカビ

今回は桐たんすのカビについてお話します。

先日、31年前に私が修行していた桐たんす工場で作られた桐たんすが、修理のために桐の蔵に送られて来た事はこのブログでお伝えしましたが、そのお客様のご依頼が、桐たんすに付いたカビをきれいにして欲しいと言うご要望でした。


観音開きの内側に生えたカビ

桐たんすは、置かれた環境によっては、たんす全体にカビが生えることがあります。それも、ほとんどは桐たんすの内部に生えることが多いのです。(状況がひどいと、たんすの外側(表面)にも生えます)

カビが生える原因のほとんどは「湿気」です。
湿気が多い場所に置いて長年使用してきたことや、締め切った部屋に置きっぱなしだったなど、湿度が多い中での使用がカビの原因になることが多いのです。

また、昔(20~30年ほど前)の桐たんすの仕上げ塗料にも、カビが生える原因の一つがあるように思います。
桐たんすは基本的には「との粉塗装」と言われる、粘土質の土「との粉」と「水」、そして20~30年前までは「ヤシャブシの実」(木の実。通称ヤシャと呼んでいました)を煮詰めて煎じた液体を「との粉」と「水」に混ぜて、それを刷毛で桐たんすに塗っていたのです。

この「ヤシャブシの実」の煮詰めて煎じた液体(通称ヤシャ)は、桐たんすの木目(柾目)の「目」を、際立たせる役割を果たていたのですが、木の実を煎じた液体なので、時間(日を)置くと、それ自体がカビやすいのです。

なので、その「ヤシャブシの実」を使って塗装した桐たんすは、湿気があるお部屋に置くと、よりカビやすいものとなるのです。

現在は、「ヤシャブシの実」に変わる「やまと液」という染料が開発され、カビることは少なくなりましたが、それでも湿気の多いお部屋に置き続ければ、完全ではありません。

湿気が多い状況で、桐たんす以外のたんすを使うと、たんす自体にはカビの発生は少ないものの、収納している衣類(きものなど)にカビが生えてしまいます。

しかし桐たんすは、カビを出来るだけ衣類に生えさせず、桐たんす自身にカビを受けることで、衣類をカビから守ってくれるのです。
とは言っても限界はあります。


衣装盆に生えたカビ

桐たんすでカビが多く生える場所は、観音開き扉の裏側です。
(観音開きのたんすの場合)ここは、湿気が多くこもる場所のため、扉の裏側にカビが生えるのです。
そして観音開きの中にある衣装盆。ここに着物を入れるのですが、この衣装盆の前板にもカビが多く生えます。


桐たんすの表面(扉)にも生えたカビ

また、桐たんすに掛けるカバー(油単)を掛けておくと、桐たんすの表面(全体)にも
カビは生えることが多いです。これも、油単を掛けることで湿気が中にこもってしまい、桐たんすの表面にカビが生えてしまいます。

逆に、引き出しの中や衣装盆の中には、カビが生えることは少ないですが、ひどい状況になると、過去にはカビが生える場合もありました。

引き出しの内側や衣装盆の内側にはカビは生えにくいのですが、ごく稀にですが、このような場所にもカビが生えることがあります。(桐の染みをカビと勘違いされる方も多いです)

基本的に、このような内側ではカンナが使えませんので、熱湯とアイロンの熱でカビ菌を除去した後、きれいに拭くという作業となります。

このようなカンナの使えない場所では、「カビ取り剤」などの薬品を使用するケースも有るようですが、私達の場合は、木を痛める可能性のある薬品の使用は行いません。

それでは、カビが生えてしまったらどうするか。
結論から言えば、カンナで削らなければカビは取れません。

水やお湯で洗うという方法もあるのですが、これは表面上の菌を流す程度で、中までのカビは取りきれません。
カビ菌をしっかり除去するには、カンナで何度か削り、しっかりとカビ菌を除去しなければカビ菌は無くならないと思うのが、私の長年の経験です。

今回のお客様からのご依頼の「桐たんすに付いたカビをきれいにして欲しい」のご依頼には、まずは、お湯で洗い、カビのある部分にアイロンを掛け、お湯と熱で桐たんすの塗装とカビを除去します。そうすることで、ほとんどのカビ菌は死んでしまいます。
その後、カビのあった部分を中心にカンナかけ、カビを除去していきます。


カビ菌を除去し、カンナを掛け、との粉で仕上げた観音開きの内側。 カビは全くありません。

そして、その後は通常のその他の傷んだ部分の修理を施し、お客様のご希望により、「との粉塗装」や「天然オイル塗装」を施し、金具を付け変え、完成となります。

このようにカビが生えた桐たんすをきれいにするには、何回かの工程を踏み、カビ菌を除去した上で、カンナを掛けてカビ菌を完全に除去するという工程が必要になります。

また、この工程が中途半端ですと、カビ菌が残っていたり、修理した後でも湿気の多い場所に再び置くなどした場合には、カビが再発する可能性もあります。


カビ菌を除去し、カンナで削った後、との粉で仕上げた衣装盆。きれいに仕上がりました。

桐たんすに生えたカビが、大切なお着物や衣類に移らない前に、しっかりとしたケアをしていただきたいと思います。

東京まで桐たんすのお届けでした。

新潟では多くの田んぼで稲刈りが始まり、秋も本番を迎えました。
多くの皆様は3連休の真っ只中だと思いますが、今日は、東京まで桐たんすのお届けに行ってきました。

起床は午前5時半。いつものように工場で弟と待ち合わせし、6時前に出発です。

3連休の中日ですが、関越高速の上り線は比較的空いています。道中は至って順調に走り、いつものように三芳SAで休憩し、いざ、お客様の元へ急ぎます。

今日のお届けは西東京市へ。
ナビは所沢ICで降りるルートで、そこから下道を走ること約30分で、お客様の素敵な、マンションに到着でした。

そして無事に素敵な和室にお届けさせていただきました。K様、3連休の中、本当にありがとうございました。

その後は、所沢ICから関越道に乗り、一路、新潟へ。しかし、ここからが都会の宿命でした。

所沢ICから乗った関越道は、行楽に向かう車で大渋滞。今までにも何度も大渋滞にはまっていますが、今日も、なかなか進みません。

お客様のマンションを出たのが、午前10時過ぎ。
本来であれば、遅くても午後1時には燕三条ICに到着のはずでしたが、燕三条に到着したのが、午後3時前。さすがに3連休です。

その後は、やっと工場に到着し、残務作業を終え、夕方に帰宅でした。

都会へのお届けは、やはり平日か、普通の週末に限りますね。
連休は、全く読めませんから。

桐たんすの木取り  板を切る  「柾板」

今回は「柾板」
通常は「柾」(まさ)と呼び、木の木目「柾目」の部分の事を言います。

桐たんすは、普通、本体側板や、「引き出し底板」、「衣装盆底板」などには、「板目」を中心に使い、「引き出しの前板」や「扉」などには柾目を用いるという使い方をします。

通常「柾目」は、「柾目の柱」などと表現されるように、直線の木目で目が詰まっていて高価なものとされているように、桐材の柾目も高価な部分です。

なぜ高価か?といえば、一本の桐(木)から柾目は取れる部分が少なく、それ故、高価になってしまうのです。例えて言うなら、マグロの中の「トロ」の部分みたいな感じでしょうか。

今日は、その柾板を切る作業でした。
注文が入った桐たんすの引き出しや扉の長さに合わせて、柾板を切っていきます。

長さを切り終えると、一枚の板から使えない柾目の部分を取り除き、使えるいい柾目だけを残します。(この時点で、約三分の二は捨てることになり、三分の一が残ります)

そこからは、一定の幅で切込みを入れるために、「柾割機」と呼ぶ、機械に手で通していきます。

桐の柾目を取るために薄く製材した桐板(柾板約5mm)は、柾目を真っ直ぐにするために、「目直し」という作業で、柾目を真っ直ぐにしていくのです。

この作業は、また後日、アップさせていただきます。

桐たんすの調子を見る。

今回は、「桐たんすの調子を見る」

調子を見るとは、「完成した桐たんすの出荷前の最後の点検」という意味で、私は、修行時代から使っている言葉。

実は、桐たんすは最後の工程の「塗装」、「金具付け」が終わっても、その状態ではすぐにはお客様の元へは届けられません。(私だけかも知れませんが)

私は、完成して少し時間をおいてから調子を見るようにしています。それはなぜか?

少し時間を置くことで、桐が少し動くのです。動くとは、気候や湿気によって引き出しが増えたり、板が少しだけ張ったりするので、それを含んで、ちょっと時間を置いてから桐たんすの調子を見るのです。

最後の調子を見るのは私。これだけは他人に譲れないと言うか、自分自身がやらないと気が収まらないというのが正直な感想かも知れません。

「調子を見る」事は、桐たんす全体を見て、傷などはないか、引き出しの出し入れはスムーズか、扉の状態は、金具の位置は、
などなど、お客様のご自宅にお届けして、すぐに使えるように、それを想定してあらゆるところをチェックします。

今日は、熊本県にお届けする、胴丸の洋服たんすと整理たんすの調子を見ましたが、洋服たんすは、奥行きが深く、扉も大きいので作る方も大変ですが、調子を見る方も、細心の神経を使います。

今回は熊本県のお客様で遠方のため、お届けは業者さんにお任せしますが、細心の注意で調子を見ます。
お使いいただけるお客様の顔を思い浮かべながら、長い間、お使いいただけるように
職人一同、桐たんすづくりに励みます。