今回は「板あぶり」
昔は(30年ほど前)までは、桐たんすを作る工程の上で、「板あぶり」と呼ぶ、作業がありました。
「板あぶり」とは、注文が入り、その注文に合わせて切った板を、直接、火に炙って板の狂いを取る作業のことなのです。
桐の板は1年間ほどの間、渋を抜くために外に干しておくのですが、その時に、板の狂いや反りなども出てくるわけです。
それを直接火に当てながら、手でねじったり、板を逆に反らせたりしながら、板の狂いを取っていたのです。
しかし、板一枚一枚を手作業で狂いを取っていく作業は、膨大な時間も手間もかかり、かなりの重労働でしたし、火を使うことで、桐たんす工場は燃えやすいカンナ葛や、木くずなどもあり、桑原たんす店時代には、何度か「ボヤ」も起こしていました。
そんな事でしたので、同業者の多くの工場は「板あぶり」から「ホットプレス」と呼ぶ、電気の熱で「プレス」して狂いを取る機械を導入し、手作業で板の狂いを取る作業から、電気の熱で狂いを取る作業へと、シフトしていったのです。
ホットプレスに掛ける前の、曲がった板
約150度に温度を上げたプレス機に、板を何十枚か乗せ、約1分間プレスで熱をかけます。それをひっくり返して両面行うと、曲がっていた板が真っ直ぐに伸びるのです。
ホットプレスにかけた後の、真っすぐになった板
桐の板が曲がっているとなぜ、だめなのか?
それは、曲がっているとカンナが掛からないし、そもそも、曲がっている板では、桐たんすが作れないからなのです。
このホットプレスの導入で、曲がった板も手作業で行うよりも格段にきれいに、まっすぐになり、何よりも、「火事」を起こす可能性が格段に少なくなりました。
この作業を重荷担当するのは奥様。
どの板を、どう置いて、最後はどう積んでいくのか、意外と頭を使う作業なのです。
ホットプレスにかけた後は、重しを乗せて、一晩置きます。
手作業が中心の桐たんすづくりですが、この「板あぶり」だけは、機械化されて本当に助かっています。