今回は、「桐を曲げる」です。
胴丸の上の、曲がって付いているのが胴巻きです。
桐たんすの製作工程に於いて唯一、桐を曲げる言う工程があります。それは、胴丸という本体が4cm厚のたんすで、本体の角が丸くなっているたんすの上と下の板の部分に巻く、「胴巻き」という装飾のために付ける薄い柾板の事を言います。
胴付きノコで細かく切れ込みをいてれいきます。
これは、約3cm幅で、長さ2m20cm位の柾板を、たんす本体の左右につける位置に印をつけ、その部分に切込みを入れ曲がりやすくします。
切り込みを入れるのは、「胴付き」と呼ぶ鋸。下まで行くと全て切れてしまいますので、胴付きに抑えを付け、下まで切れないように加工してあります。
この後、水分をたっぷり含ませ、熱したアイロンを掛け、曲げていきます。
その切れ込みを約6cmの幅で切込み、そこにタオルで水分をたっぷり染み込ませ、熱したアイロンを当て、水分と熱で少しずつ曲げていきます。これを2回繰り返すと、桐が柔らかくなり曲がるのです。
曲がった胴巻き。
最近でこそありませんが、胴付きノコでの切込みが甘かったり、水分が足りなかったり、熱が足りなかったりすると、桐の曲がりが固く、無理やり曲げたりすると、胴巻きを折ってしまったことも何度かありました。
曲げる所にも、曲げた当て木を当て、ハタガネで締めます。
こうして柾板を2箇所曲げ、それを、胴丸の上と下の板にハタガネで接着していきます。この作業も、カーブしている場所を接着するために、当て木をそのカーブに合わせて丸みを取り、そこにハタガネを当てるなど、なかなか苦労します。
大、小のハタガネで締め付けて、胴巻きを貼り付けます。
写真で見ると、かなりの数のハタガネで、縦横無尽に締め付けられている感じです。そうしないと、丸みのある胴丸のたんすに、胴巻きが付かないのです。
桐たんすの製作で桐を曲げる工程は、私達の工房ではこれだけですが、これも親方から教わった技術。もう、30年ほどこれを担当しています。